MATO PARENTS JOURNAL
- KAWAII
- 51
- OMG
- 47
- YEAHHH
- 52
RED
かわいい息子が「みんなの無意識をほじくり回す」。作家・大田ステファニー歓人が今感じていること
MATO JOURNAL 編集部
ペアレンツびと Vol.07 - PARENTS 加賀美健
MATO by MARLMARLでは、「マザーズバッグからペアレンツバッグの時代へ」 と題した、社会全体の子育て意識を拡げるプロジェクトを進めてきました。
本シリーズ企画では、自分らしいスタイルで子育てを楽しむ「ペアレンツ=子育てに携わるすべての人」に光を当ててお話を伺います。
今回インタビューしたのは、現代美術作家として活動している加賀美健さん。世の中の出来事とユーモアを組み合わせた作風が特徴的で、SNSには中学2年生の娘さんにまつわる投稿もたびたびアップされています。
加賀美さんの考える、子育てとアートの関係性とは? 家族との過ごし方や子育てシェアについても伺いました。
── 加賀美さんは、自宅の近くに仕事用のスタジオを借りているそうですね。仕事とプライベートをきっちり分けるために借りたんでしょうか?
スタジオを借りたのは、単純にモノが増えたからです。変なものばっかり買っちゃうので。娘が幼少期の頃はまだスタジオを借りていなかったので、仕事も子育ても同じ空間でうまく両立させていました。
── そうだったんですね。毎日夜は家族との時間をしっかり確保されているようですが、現在はどんなタイムスケジュールで1日を過ごされているんですか?
毎朝8時からお昼頃まで、スタジオで一気に仕事をしています。お昼ごはんを食べたら眠くなっちゃうので、たまに昼寝をすることもありますね。午後は打ち合わせに行って、夕方にスタジオに戻って、少し作業したら自宅に帰って18時には晩御飯の時間。夜は家族とリビングで過ごしています。
── 家族との時間はどのように過ごされていますか?
最近はよく家族みんなで恋愛リアリティーショーを見ていますね。(笑)『バチェラー・ジャパン』シリーズとか『ラブ トランジット』とか『ラブ デッドライン』とか。娘が大好きで、家族みんなでツッコミを入れながら何回も見てるんです。すごく面白いんですよ。
── 創作活動と同じくらい、ご家族と過ごす時間が長い加賀美さん。子育て中に感じたことや見たものが作品に繋がると実感することは?
たくさんあります。他のアーティストの作品もたくさん見るんですけど、僕はもともと日常生活の中からインスピレーションを得ることの方が多いんです。日々のニュースだったり、家族との会話だったり、街中で聞こえてくるおばちゃんの話だったり。昔から人間観察が好きなので、今日も取材スタッフのみなさんのことをよーく見ていますよ(笑)。
── わたしたちも!? その観察力が、加賀美さんらしいユーモアラスな発想に繋がるんですね。
子どもの普段の様子もそうです。娘が生まれてからの方が、いろんな発想を得られるようになりましたね。でも、具体的にどんなプロセスで作品に落とし込んでいるかは、自分でもよくわからなくて。たぶん感覚的で自然に、なんですよね。
── 生活の延長線上に作品があるんですね。
最近は娘のふとした発言が面白いので、メモしたりSNSにアップしたりして残すようにしています。娘も僕のアカウントを見ているので、「載せないでよ!」と怒られてしまったこともあって……なので今はアップする前に必ず娘に許可を得るようにしています。機嫌が悪いとダメだと言われますが(笑)。本人も今のところ楽しんでくれているみたいですね。
── SNSでのアウトプットも娘さんとのコミュニケーションのきっかけの一つになっているんですね。
そうですね。僕が「これ面白い!」と思ってSNSに投稿しても、フォロワーからの反応が少ないときがあるんです。でも、娘はその投稿を「面白いね」と言ってくれるときがあって。それはすごく嬉しいですね。
── 娘さんも人の「いいね」に流されることなく、自分の軸がしっかりとあるんですね。
作品やSNS投稿に対する反応を見ていると、「面白いと感じるものや好きな作品は人それぞれなんだな」と改めて思います。100人が好きだと言ってくれる作品でも、1人くらいは好きじゃない人がいるだろうし、逆も然り。
感性や考え方は人それぞれなので、否定的な意見もあまり気にしすぎないようにしています。捉え方の違いそのものも、その人のセンスや個性なんだと思いますし、それがアートを楽しむ醍醐味なのかなとも感じますね。
── 娘さんがアートに興味を持っている様子はありますか?
ありますね。自由奔放に色々作るしたくさん描くから、娘の作品で家が溢れていてすごいんですよ(笑)。幼少期におもちゃを多くは買い与えていなかった分、僕がダンボールで色々作ってあげていたんですよね。それが面白かったみたいで、だんだん自分でも作って遊ぶようになっていました。
娘の絵は0歳の頃の作品から、全部保管してあります。娘は今も絵を描くのが大好きで、僕が取っておくのを知っているから、描き終わったら机の上にそっと置いておいてくれるんですよ(笑)。今までの作品を入れたダンボールの量がすごいことになっていますね。
── 娘さんの作品に対して、加賀美さんもフィードバックはするんですか?
普段からすごく褒めてます。本当に面白いですし、どんどん上手くなるんですよ。しかも画力だけでなく、頭の使い方もすごいんです。リビングで『ドラえもん』を観ながら絵を描いているから、てっきりドラえもんを描いてるのかと思いきや、全然違う絵を描いてるんです(笑)。
── 娘さんも、描くこと、作ることが習慣化しているんですね。加賀美さんの方から、娘さんの感性を育むために心がけていたことは何ですか?
まずは自分の感性や考えを押し付けないこと。もし娘が「アートを教えて」と言ってきたら100%で教えるつもりではいます。でも、娘は生まれたときから僕のやっていることや作品を見ているので、それで十分だろうとも思うんです。
彼女が普段から見ている僕らの服装や選ぶものも美的感覚に繋がっているだろうし、家のトイレに作品集も置いているから、生活の中で自然とアートにも触れている。他の家庭にはないようなものがある家だけれど、あえて僕から何か教えるようなことはしていません。
── 作り方やアプローチの手法などについては語らないんですね。
そうですね。ただ、展覧会に連れて行ったときに「こういうのもアートだよ」と伝えることはありました。アートは絵や彫刻以外にも色々ありますし、型が決まっているものでもないですから。「親がアートをやっているから」みたいな考えは取っ払って、娘らしく自由に感じ取って楽しんでもらえればいいんじゃないかなと思っています。
── 加賀美さんの娘さんが生まれた約15年前は、今よりも街で抱っこ紐を使うお父さんの姿が少なかったり、子育てをしようにも男性用トイレにおむつの交換台がなかったりしたこともあったと思います。当時、子育てをする上で戸惑ったことや大変に感じたことはありましたか?
きっと当時も大変なことはあったと思うんですけど、振り返ってみると楽しかった印象の方が強いですね。困ったことがあっても、大体のことは何とかなる。あっという間に娘が大きくなったので、妻と「また小さいときの娘に会いたいね」なんて会話もするくらいです。
── 子育てのフェーズによって、家族の在り方が変わったと感じることは?
娘が小学4〜5年生のころ、第一次反抗期でママに当たりが強くなってしまう時期があったんです。そこで僕もちょっと感情的になって娘に注意すると、妻が「イライラして言うのはダメだよ」と言ってくれて。大人が複数いると客観視ができるので、大きな喧嘩に至ることもなく、よかったなと思います。
── 加賀美さんが、パートナーとの子育てシェアで大切にしていることは?
妻も働いているので、お互いのスケジュールを見ながら娘のお迎えや家事をシェアしていますね。そして何かをしてもらったときは、絶対に「ありがとう」を忘れないようにしています。
── 感謝の気持ちを忘れない二人の習慣が、お互い助け合いながら子育てをするスタイルに結びついているんですね。
感謝の気持ちを伝えるようにするのは、妻と付き合い始めた18歳の頃からの習慣です。29歳で結婚して37歳で娘が生まれて、今50歳になったので……もう30年以上! 自然と続けていますね。パートナー同士、日頃から感謝をちゃんと伝えることが、子育てを一緒に楽しむ秘訣なのかもしれないですね。
「ペアレンツ」をテーマにペアレンツバッグに一言。
── パートナー以外の方と子どもや子育ての話をすることはありますか?
もちろんです。先日、友人の子どもが生まれたので、早く会いたいなと思っているところです。みんながペアレンツとして協力しながら、子育てを楽しめていけたらいいですよね。
── 今の日本は、子育てにまつわる苦労や大変さが叫ばれることが多いです。加賀美さんは、そんな空気に対して考えることはありますか?
子育てって、ポジティブなことしかないですよ。子どもが生まれると考えることが1から10くらいまで増えるので、自分も成長できたのではないかと思います。僕はそこを大変だと思わずに思いっきり楽しめたので、よかったなと。
しかも子どもが考えることや言動も本当に面白くて。娘の存在や子育ての経験が今の僕にも繋がっているし、楽しいと思ったことしかないですね。
── 社会のいちペアレンツとして、加賀美さんが世の中の子どもたちに伝えていきたいことは?
娘には小さい頃からよく「自分で考えなさい」と言っていますね。人から聞いた話が正解ではない場合もある。だからこそ、自分の頭で1回考えてから行動すること。「ちょっとでも違和感を覚えたら、人の意見に流されずに、まずは立ち止まりなさい」と伝えたいです。
子どもの頃から考える癖がつくと、自分でしっかり判断できる大人になれるのではないかと思っています。自分の軸を持てたほうが、逆に自由にできることも増えるんじゃないのかなと思いますね。
加賀美健が選んだペアレンツバッグ:CONTAINER TOTE BAG
企画:MATO by MARLMARL
編集・取材:小沢あや(ピース株式会社)
構成:伊藤美咲
撮影:戸松愛
1974年生まれ、東京都出身。スタイリストのアシスタントやサンフランシスコでの滞在を経て、作品を発表し始める。彫刻、絵画、ドローイングなど作品スタイルは多岐に渡り、ブランドとのコラボアイテムも多数。主な展覧会に、「トレバー・シミズ&加賀美健」、「スコット・リーダー 加賀美健 The Future is Stupid」、「アートがあれば2」などがある。現在中学2年生の娘がいる。
MATO JOURNAL 編集部
MATO JOURNAL 編集部
MATO JOURNAL 編集部
MATO JOURNAL 編集部