PARENTS JOURNAL

一粒の栗を帰り支度の一つとして

先日、とても素敵だなと思ったお姿があって、
その方々の笑顔が深く心に残った。

9月、久しぶりに爽やかに晴れた日曜日、70代のそれはそれはとても素敵なご夫妻が自宅に遊びにきてくださった。
奥様は深いオレンジ色のピアスに赤いトップス、旦那様は淡いデニムに赤いベルトをお召しで。

 

野菜をいつも購入してくださっているご縁で、昨年わたしがとある失敗に気がついて慌てて電話をした日から「これからメッセンジャーでやりとりしましょう!」ととても気さくにメッセージのやりとりがスタートしたのでした。

電話をするきっかけになった「だるまいも」という長芋の一種のいまの畑。葉が茂りもふもふです。

関東にご自宅、北海道に別宅をお持ちで、ご子息ご息女はパリとNYでそれぞれ活躍なさっていると以前メッセージのやりとりで伺っていた。

ご夫妻は、一年を通じて関東、北海道、パリ、NYとそれぞれの街を中心に旅するように暮らされていて、旅先から送ってきてくださる写真、美味しいものや芸術のお話は知らないことばかりで本当に心が躍る。「こんな世界があるんだ、いつか目にしてみたい」…

 

マレーシアのサラワク州の州都クチンのドリアンは格別!


Tea timeにアピオスと桃胶(タオジャオ/ Peach gum)を白木耳とクランベリーで煮たものに入れて出したら…』『(タオジャオは)毎年冬にクアラルンプールに行くと漢方薬のお店で買って持ち帰ってました』


『MuséeGuimettギメ東洋美術館。紀元前2000年から3000年前の縄文土器に久しぶりに再会しました。でもなんと!説明はフランス語、英語、中国語でした。日本のものも多く展示されているのですが、日本語では一切書かれてませんでした。』


『我が家のブランチの定番の鰯のマリネにたっぷりいれて...』


『昨夜は今週からのSalonの話題を考えながらふとグラスゴーで開催中のCOP26に関して取り上げてみようと思いつき、本棚にあった鶴見和子著「南方熊楠」を朝方4時ごろまで読んでいました。南方熊楠は100年も前に自然環境の保護を唱え、生態系を守る大切さを説いた学者です。(昨年11月7日のやりとり) 』

 

我が家のブランチの定番の鰯のマリネ」のご様子、奥様撮影。こんなブランチが日常の暮らし、素敵すぎます

 

世の中には、本当に少しもその存在を知らなかったことやものがたくさんあるのだなと、とても気持ちよく思い知る。

タオジャオは桃の木から分泌された樹液で薬膳の一種らしく、なんとも気になる。鰯のマリネは、もともとも食べれば好きだったが急にスポットライトが当たった。保存食にもたしかにいいな。「南方熊楠(みなかたくまぐす)」はその後同じ本を購入し、寝る前にこつこつ読んだ。彼の情熱の熱量に驚いた。

 

そんな風にして、素敵な方と思いがけずはじまったメッセージのやりとりは、わたしの日常に興味や好奇心の種を蒔いていってくださる。ぽつぽつぽつぽつと。

 

そうして、先日の日曜日、とうとうお会いしたのでした。

 

奥様の、ピアスの深いオレンジ色とトップスの赤が表すようなお人柄はとても明るく華やかで!
たくさんお話をしても、かえって元気が湧くような、本当に太陽のような方だった。

してくださったお話も広く深く、笑ったり興味深かったり、
お会いしてますます大好きになった。

旦那様は、多くは語られずとも穏やかに補足をしてくださったり頷かれていたのですが、
最後にお帰りの際に見せてくださった笑顔がまたわたしの心に深く残った。

 

会話の最後の頃、お話のなかで「栗」の話題になったのだと思う。

過去のメッセージのやりとりにも、栗が大好きでお誕生に栗のお重を取り寄せされたり、パリの栗とマロニエの違いを説明してくださったお話があったので、わたしたちの住む地域の栗をお見せしようと思った。

ちょうど前日、夫が山あいの畑の入り口から拾ってきてくれた栗を娘とむいていて、娘がぽいぽいと投げたりしているうちに笑、はぐれて剥き逃したものが一粒だけあった。

それを思い出して、くっついて離れなくなった娘を抱っこしたまま台所からその一粒を持ってきて、ご夫妻にお見せした。

わたしは品種などはわからない。
くるみや松の実なども海外種のものの方が何かと大きいから、日本の栗もきっと「小さい」という特徴や、頭のとげ?が長いなど、ご興味があるかなと思って何気なしにだった。

それからほどなくしてお帰りの時間となり、見送りをしようとお支度を見守っていたときに、旦那様がにこっと笑いかけてくださり、その一粒の栗を帰り支度の一つとして握られていた。

 

それまでに心が十分温まっていたからだろうか
その笑顔と、栗を手に持ってくださった姿にちょっと泣きそうになった。

 

差し出したものに、興味を持ってもらえ、受け取ってもらえることってこんなに嬉しいことなんだなと。

 

世界中を旅され、美しいものを見て、美味しいものを食され、奥様も本当にお料理上手で。

そんな方々が、一粒の、何気なくお見せした栗を持ち帰られた姿に、大事なことを教えて頂いた。

 

差し出されたものは、興味を示し、受け取るべき。

そのときに、にこっと笑顔を添えられたら、なお最高。

 

 

2歳をすぎた娘が毎日、「ママみて」「ママみて」「ママもやって〜!と、いまママママママのラッシュで!

「ママみて」に対してはたいていは見てあげられているように思うのですが(たぶん…!)、
「ママもやって」に対しては「ママいまお野菜切っているからできない」 「ママには小さいからできない」と断ることもけっこうあって。

 

もっと前のめりで興味を示し、その思いを受け取ってあげたらいいんだね

そしたら、きっとはじけるような笑顔で喜び、もっと張り切る娘の姿が浮かぶ。

 

差し出されたら、まずは受け取ってみる。

それが「モノ」じゃないのなら、両手のひらを広げて待っているイメージよりも、
「めっちゃいいじゃん」とがしっと掴みに行くくらいのテンションでもいいのかも。

 

たいていいつも積極的で楽しそうにしている娘。娘の差し出してきた「共有したいこと」を「めっちゃいいじゃん!」と前のめりで掴んであげたらとても喜ぶのだろうな^^

最後に、メッセージのやりとりがはじまった頃、奥様がくださったエールがとても沁みたので書き写してみます。

さとみさん、子育ては一世一代!とんでもない大きな大きなプロジェクトです!
いい思い出をたくさん残しながら子供達とたくさん言葉を交えて子育てを楽しんで下さい。
わたしは子供たちがそれぞれ独立した後もまだ死ぬまで続く子育て!と思って
今も子供たちと交わす会話が何より楽しく別世界を楽しんでます。」

距離も年代も関係なく、気さくに出会ってくださった、人生の大先輩なご夫妻に心からの感謝を。

 

 

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